EOQは「発注費用と保管費用の綱引き」

在庫管理で最初に出てくる公式が経済的発注量(EOQ: Economic Order Quantity)です。運営管理では計算問題として、企業経営理論や財務・会計でも在庫の考え方として顔を出すので、意味から押さえておくと応用が利きます。

在庫には2種類の費用がかかります。

費用 内容 1回の発注量を増やすと
発注費用 発注1回ごとにかかる事務・輸送などの固定的な費用 発注回数が減るので減る
在庫保管費用 倉庫代・金利・劣化など、在庫1個を1年持つのにかかる費用 平均在庫が増えるので増える

一方が下がればもう一方が上がる綱引きの関係です。年間の合計費用がいちばん小さくなる発注量がEOQで、そこでは年間発注費用=年間保管費用になります。この「両者が等しい」という性質は正誤問題の定番なので、公式と一緒に覚えてください。

公式と計算例

EOQ = √( 2 × D × S ÷ H )
  D:年間需要量
  S:1回当たりの発注費用
  H:1個当たりの年間在庫保管費用

例:年間需要量1,800個、1回の発注費用500円、1個当たり年間保管費用20円のとき

EOQ = √(2 × 1,800 × 500 ÷ 20) = √90,000 = 300個

検算のコツは「等しくなるか」を見ることです。年間発注回数は1,800÷300=6回、年間発注費用は500×6=3,000円。平均在庫は300÷2=150個、年間保管費用は20×150=3,000円。ぴったり一致するので正解と確信できます。

覚え方

2DS割るH、ルート」と口に出して覚えるのが早道です。分子には「増えるとたくさん発注したくなるもの(需要D・発注費用S)」、分母には「増えると発注量を減らしたくなるもの(保管費用H)」が入る、と理解しておくと分子分母を取り違えません。

もう1つの頻出は「需要が4倍になるとEOQは何倍か」というタイプです。ルートの中が4倍になるので答えは2倍。EOQは需要に比例せず、√に比例することを押さえましょう。

定量発注方式と定期発注方式

EOQは「いくつ頼むか」を決める道具ですが、「いつ頼むか」は発注方式で決まります。試験では2つの方式の特徴を入れ替えた誤肢が頻出です。

定量発注方式 定期発注方式
発注のタイミング 在庫が発注点まで減ったとき(不定期) あらかじめ決めた発注間隔ごと(定期)
発注量 毎回一定(EOQなど) 毎回計算して変える
向いている品目 需要が安定した品目、単価の低いB・C品目 需要変動が大きく重要なA品目
管理の手間 少ない(発注点を割ったら頼むだけ) 多い(毎回需要予測が必要)

定量=量が一定、定期=期が一定」と字面のとおりに読めば混乱しません。「定量発注は発注間隔が一定」と書かれた選択肢は即座に切れます。

発注点の決め方

定量発注方式では、発注してから納入されるまでの調達期間(リードタイム)中に在庫が尽きないよう発注点を置きます。

発注点 = 調達期間中の平均需要量 + 安全在庫

安全在庫は需要のばらつきに備える余裕分で、需要の標準偏差と調達期間が大きいほど、また欠品を許さない(サービス率を高くする)ほど大きくなります。「安全在庫は√調達期間に比例する」という性質も、たまに問われます。

定期発注方式では発注量そのものを毎回計算します。

発注量 = (発注間隔 + 調達期間)中の需要予測量 + 安全在庫 − 現在の在庫量 − 発注残

「発注間隔+調達期間」の分をカバーするのがポイントです。次回の発注分が届くまでの期間を全部まかなう必要があるからです。

ABC分析との組合せで覚える

在庫品目を金額の大きい順に並べ、累積構成比で分類するのがABC分析です。上位少数のA品目が金額の大半を占めるため、A品目は定期発注方式できめ細かく、金額の小さいC品目は定量発注方式やダブルビン方式(2つの箱の一方が空いたら発注)で手間をかけずに管理します。「重要な品目ほど手間をかける」という発想で、方式との対応をセットで暗記しましょう。

学習のコツ

  • 計算問題は公式の丸暗記より「年間発注費用=年間保管費用」で検算する習慣をつけると、ケアレスミスが消えます。
  • 「需要が○倍→EOQは√○倍」「調達期間が○倍→安全在庫は√○倍」のように、ルートで効く関係をまとめて覚えると正誤問題に強くなります。
  • 発注方式の表は自分で白紙に再現できるまで書き出してください。誤肢の作られ方が「入れ替え」なので、表が頭にあれば得点源になります。