まず費用を変動費と固定費に分ける
損益分岐点(BEP: Break-Even Point)分析は、売上がいくらになれば利益がゼロになるかを求める手法です。出発点は費用を変動費(売上に比例して増減する費用:材料費、仕入原価、外注費など)と固定費(売上に関係なく発生する費用:人件費、減価償却費、地代家賃など)に分解することです。この分解を固変分解と呼びます。
分解できると、売上高から変動費を引いた限界利益(貢献利益)が計算できます。
限界利益 = 売上高 - 変動費
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 = 1 - 変動費率
営業利益 = 限界利益 - 固定費
限界利益は「売上が1円増えたときに、固定費の回収と利益に回せる金額」です。損益分岐点とは、この限界利益がちょうど固定費と等しくなる点にほかなりません。ここから公式が導けます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
ひとつの数値例で通して解く
例:売上高5,000万円、変動費3,000万円、固定費1,400万円の企業。
手順1:限界利益と限界利益率
- 限界利益 = 5,000 - 3,000 = 2,000万円
- 限界利益率 = 2,000 ÷ 5,000 = 0.4(40%)
- 変動費率 = 3,000 ÷ 5,000 = 0.6(60%)。40% + 60% = 100% で整合します。
手順2:損益分岐点売上高
- 1,400 ÷ 0.4 = 3,500万円
検算します。売上3,500万円のときの変動費は3,500 × 0.6 = 2,100万円、限界利益は3,500 - 2,100 = 1,400万円。固定費1,400万円とぴったり一致し、営業利益はゼロです。公式を使ったら必ずこの形で戻して確かめてください。
手順3:安全余裕率と損益分岐点比率
安全余裕率 =(実際売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高
- 安全余裕率 =(5,000 - 3,500)÷ 5,000 = 0.3(30%)
- 損益分岐点比率 = 3,500 ÷ 5,000 = 0.7(70%)
- 両者の合計は必ず100%になります。ここも検算ポイントです。
安全余裕率は「売上があと何%落ちても赤字にならないか」を示す指標なので、高いほど安全。逆に損益分岐点比率は低いほど安全です。どちらが高いほど良いのかを取り違える誤答が多いので、意味から覚えてください。
手順4:目標利益を達成する売上高
営業利益900万円を狙うなら、固定費に目標利益を足して同じ割り算をします。
- (1,400 + 900)÷ 0.4 = 5,750万円
- 検算:5,750 × 0.4 = 2,300万円(限界利益)、2,300 - 1,400 = 900万円 ✓
数量ベースと経営レバレッジ係数
単価5,000円、1個当たり変動費3,000円、販売数量10,000個と考えると、上の数値例と完全に一致します(売上5,000万円、変動費3,000万円)。1個当たり限界利益は2,000円なので、
- 損益分岐点販売数量 = 1,400万円 ÷ 2,000円 = 7,000個(=売上3,500万円で一致 ✓)
最後に経営レバレッジ係数です。
経営レバレッジ係数 = 限界利益 ÷ 営業利益 = 1 ÷ 安全余裕率
- 2,000 ÷ 600 = 約3.33、1 ÷ 0.3 = 約3.33 ✓
この係数は「売上が1%変化すると営業利益が何%変化するか」を表します。固定費の比率が高い企業ほど係数は大きく、好況では利益が跳ね、不況では急速に悪化します。安全余裕率の逆数だという関係を押さえておくと、片方から他方を即座に出せます。
| 指標 | 計算式 | 例の値 | 望ましい方向 |
|---|---|---|---|
| 限界利益率 | 限界利益÷売上高 | 40% | 高い |
| 損益分岐点売上高 | 固定費÷限界利益率 | 3,500万円 | 低い |
| 損益分岐点比率 | BEP売上高÷実際売上高 | 70% | 低い |
| 安全余裕率 | 1-損益分岐点比率 | 30% | 高い |
| 経営レバレッジ係数 | 限界利益÷営業利益 | 約3.33 | 低いほど安定 |