なぜこの2つがセットで出るのか

需要の価格弾力性と余剰分析は、中小企業診断士の経済学・経済政策で最も安定して出題されるミクロの論点です。しかも両者はつながっています。課税や規制で「誰がどれだけ損をするか」は、需要と供給の弾力性で決まるからです。

計算は四則演算だけで済むので、手順を固めれば確実な得点源になります。

需要の価格弾力性の基本

需要の価格弾力性は「価格が1%変化したとき需要量が何%変化するか」を表します。

弾力性 = 需要量の変化率 ÷ 価格の変化率

需要曲線は右下がりなので符号はマイナスになりますが、試験では絶対値で扱うのが通例です。

弾力性の値 呼び方
1より大きい 弾力的 外食、旅行、ブランド品
ちょうど1 単位弾力的 総収入が価格に依存しない点
1より小さい 非弾力的 主食、電気、たばこ
0 完全非弾力的 需要曲線が垂直
無限大 完全弾力的 需要曲線が水平

計算の手順

  1. 変化前の価格と数量を基準にする(設問に指示があればそれに従う)
  2. 需要量の変化率と価格の変化率をそれぞれ求める
  3. 割り算する

例:価格100円→120円、数量50個→40個なら、数量−20%÷価格+20%=絶対値1.0です。

総収入との関係

「値上げすると売上(総収入)は増えるか」は弾力性で決まります。

  • 弾力的(>1):値上げすると総収入は減る
  • 非弾力的(<1):値上げすると総収入は増える

覚え方は「弾む財は逃げる」。弾力的な財は値上げすると顧客が逃げて売上が落ちる、と結びつけておきましょう。

直線の需要曲線の落とし穴

直線の需要曲線は、傾きが一定でも弾力性は点ごとに異なります。価格が高い(左上)ほど弾力的、低い(右下)ほど非弾力的で、中点でちょうど1になります。「傾き一定=弾力性一定」と書かれた選択肢は誤りです。

余剰分析の基本

余剰 定義 図のどこか
消費者余剰 支払ってもよい額 − 実際の支払額 需要曲線の下、価格の上
生産者余剰 受け取った額 − 最低限受け取りたい額 価格の下、供給曲線の上
総余剰 消費者余剰+生産者余剰(+政府収入) 需要と供給に挟まれた三角形

完全競争の均衡では総余剰が最大になります。この状態から離れると必ず**死荷重(厚生損失)**が生じる、というのが分析の軸です。

従量税を課すと何が起きるか

  1. 供給曲線(または需要曲線)が税額分だけ上(下)にシフトする
  2. 取引量が減り、消費者が払う価格は上がり、生産者が受け取る価格は下がる
  3. 消費者余剰と生産者余剰が減る
  4. 減った分の一部は政府の税収(長方形)になる
  5. 残りの三角形が死荷重

ポイント:税を誰に課しても(法律上の納税者が誰でも)、実際の負担配分は弾力性で決まります。

  • 需要が非弾力的なら消費者の負担が大きい
  • 供給が非弾力的なら生産者の負担が大きい

「逃げられない側が負担する」と覚えてください。弾力性が小さい=価格が変わっても行動を変えられない=負担を押し付けられる、という理屈です。

死荷重の大きさ

死荷重は取引量の減少幅に比例するので、需要・供給が弾力的なほど死荷重は大きくなります。逆に、どちらかが完全非弾力的なら取引量が減らず死荷重はゼロです。

価格規制の場合

  • 上限価格(家賃規制など)を均衡価格より低く設定 → 超過需要、死荷重
  • 下限価格(最低賃金など)を均衡価格より高く設定 → 超過供給、死荷重

どちらも「均衡から動かすと三角形の損失が出る」という同じ構図です。上限価格が均衡より高い位置にある場合は拘束力がなく、何も起きない点も出題されます。

図を描く練習が最短ルート

余剰分析は文章で覚えるより、白紙に需要と供給の×印を描き、税・規制のたびに色分けして面積を確認するのが一番速く定着します。試験本番でも余白に小さな図を描けば、選択肢の正誤は数十秒で判定できます。

学習の順序としては、①弾力性の計算 ②総収入との関係 ③課税の帰着 ④死荷重の大小 の4段階で進め、それぞれを本アプリの演習で確認してください。計算問題は基準となる価格と数量の取り違えが最大の失点要因なので、必ず「どの値を分母にするか」を意識して解きましょう。