取締役会設置会社には3つの選択肢がある

現行の会社法は、取締役会を置く株式会社の監査・監督の仕組みとして、監査役(会)設置会社監査等委員会設置会社指名委員会等設置会社の3類型を用意しています。監査等委員会設置会社は平成26年改正(平成27年施行)で導入された比較的新しい形態で、指名委員会等設置会社の利用が伸び悩んだことを受けた「中間形態」として設計されました。

経営法務では3類型の識別問題が繰り返し出ます。**「誰が監査するか」「その人は取締役会で議決権を持つか」「執行役がいるか」**の3点を軸に押さえると、細かい数字も体系の中に位置づけられます。

3類型の比較

観点 監査役会設置会社 監査等委員会設置会社 指名委員会等設置会社
監査を担う機関 監査役会 監査等委員会 監査委員会(+指名・報酬委員会)
構成員 監査役3人以上、うち半数以上が社外監査役(常勤監査役の選定が必要) 取締役3人以上、うち過半数が社外取締役 各委員会とも取締役3人以上、うち過半数が社外取締役
監査担当者は取締役か いいえ(監査役は取締役ではない) はい はい
取締役会での議決権 なし あり あり
任期 監査役4年(短縮不可)/取締役2年 監査等委員である取締役2年(短縮不可)/それ以外の取締役1年 取締役1年
解任の決議 監査役の解任は株主総会の特別決議 監査等委員である取締役の解任は特別決議(それ以外は普通決議) 普通決議
業務執行機関 代表取締役・業務執行取締役 代表取締役・業務執行取締役 執行役・代表執行役(取締役会が選任)
会計監査人 大会社は必須 必須 必須
設置できる会社 取締役会設置会社 取締役会+会計監査人が前提 取締役会+会計監査人が前提

数字の要点は「監査役は半数以上が社外、委員会は過半数が社外」という対比です。「半数以上」と「過半数」は、たとえば4人の場合に2人でよいか3人必要かで結論が分かれるので、ここは意識して区別してください。

権限の違いが最大の識別ポイント

監査役会設置会社

監査役は取締役ではないため、取締役会の議決に加われません。適法性監査(業務監査・会計監査)を担い、経営判断の当否そのものには原則として踏み込まない、というのが伝統的な整理です。監査役会は監査役の互選ではなく、常勤監査役を選定しなければならない点も頻出です。

なお、令和元年改正会社法(令和3年3月1日施行)により、公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で、金融商品取引法上の有価証券報告書の提出義務がある会社は、社外取締役を置くことが義務づけられました(会社法327条の2)。上場会社が対象になるルールです。

指名委員会等設置会社

指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会すべてを置く形態です。最大の特徴は、監督と執行を制度として分離している点にあります。

  • 指名委員会:取締役の選解任議案の内容を決定する
  • 報酬委員会:取締役・執行役の個人別の報酬を決定する
  • 監査委員会:取締役・執行役の職務執行を監査する

これらの決定は取締役会でも覆せません。したがって代表執行役(社長)であっても、自分や部下の取締役の指名や報酬を決めることができません。ここが権限の強さの本質です。業務執行は取締役会が選任した執行役が担い、取締役会は業務執行の決定を大幅に執行役へ委任できます。

監査等委員会設置会社

監査等委員会は監査委員会に相当する機能だけを持ち、指名委員会・報酬委員会は置きません。そのかわり監査等委員会には、**取締役の選任・解任・辞任および報酬等について株主総会で意見を述べる権利(意見陳述権)**が与えられています。「決定権はないが、意見を言う権利で牽制する」という設計です。

もうひとつの重要論点が、重要な業務執行の決定の委任です。監査等委員会設置会社では、取締役の過半数が社外取締役である場合、または定款にその旨の定めがある場合に、取締役会は重要な業務執行の決定を取締役に委任できます(会社法399条の13第5項・第6項)。指名委員会等設置会社でなくても機動的な意思決定が可能になる仕組みで、この形態が普及した大きな理由です。

覚え方の整理

  1. 監査役か取締役か:監査役会設置会社だけが「取締役でない監査役」を使う。だから議決権がない。
  2. 委員会はいくつか:指名委員会等設置会社は3つ全部、監査等委員会設置会社は1つだけ。
  3. 執行役がいるのは指名委員会等設置会社だけ。「執行役」と「執行役員」(会社法上の機関ではない任意の役職)の混同は典型的な誤答です。
  4. 社外要件は「監査役=半数以上/委員会=過半数」、任期は「監査役4年・監査等委員2年・その他1年」。