経営承継円滑化法は「4つの支援」で覚える
事業承継の支援策の中心にあるのが、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)です。この法律が用意している支援は次の4つで、まずこの枠組みを頭に入れると個々の制度が整理できます。
| 支援 | 内容 | 認定・確認を行うのは |
|---|---|---|
| 税制支援 | 贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度の前提となる認定 | 都道府県知事 |
| 金融支援 | 中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例の前提となる認定 | 都道府県知事 |
| 遺留分に関する民法の特例 | 除外合意・固定合意の確認 | 中小企業庁(経済産業大臣) |
| 所在不明株主に関する会社法の特例 | 会社法上の「5年」を「1年」に短縮する特例の前提となる認定 | 都道府県知事 |
**遺留分の民法特例だけ確認先が国(中小企業庁)**で、ほかの3つは都道府県知事の認定、という点がそのまま出題ポイントになります。所在不明株主に関する会社法の特例は、令和3年8月2日施行の改正で新設された比較的新しい制度です。
法人版事業承継税制:特例措置と一般措置
法人版事業承継税制は、後継者が円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合に、その株式等に係る贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により免除される制度です。平成30年度税制改正で、従来の措置(一般措置)に加えて10年間限定の特例措置が創設されました。
| 一般措置 | 特例措置 | |
|---|---|---|
| 対象株式数 | 総株式数の3分の2まで | 上限を撤廃(全株式) |
| 納税猶予割合 | 80% | 100% |
| 事前の計画提出 | 不要 | 特例承継計画の提出が必要 |
| 後継者 | 1人 | 代表者である後継者、最大3人 |
| 先代(贈与者・被相続人) | 主に先代経営者 | 親族外を含むすべての株主 |
| 雇用確保要件 | 承継後5年間平均で8割維持が必要 | 満たせなくても報告により納税猶予を継続可能 |
| 適用期限 | なし | 10年間の限定措置 |
特例措置では「対象株式の上限撤廃」と「猶予割合の100%への引上げ」により、承継する株式にかかる贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象になります。将来の売却・廃業時に株価が下落していた場合に、その株価を基に納税額を再計算して差額を減免する仕組みもあります。
雇用確保要件は「撤廃された」のではなく「満たせなかった場合でも納税猶予が継続できるようになった」点に注意が必要です。要件を下回った場合は都道府県への報告が必要で、経営悪化等が理由であれば認定経営革新等支援機関の指導助言を受けなければなりません。
期限は数字で正確に押さえる
特例措置は期限のある制度なので、日付がそのまま論点になります。
- 特例承継計画の提出:平成30年4月1日から令和9年9月30日までに、都道府県へ提出して確認を受ける。
- 贈与・相続の実行:平成30年1月1日から令和9年12月31日までに株式を取得すること。
特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継後5年間の事業計画等を記載し、認定経営革新等支援機関(商工会議所、金融機関、税理士など)の指導・助言を受ける必要があります。
認定後も手続は続きます。認定の有効期限は最初に適用を受ける申告期限の翌日から5年で、この間は都道府県へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を、いずれも年1回提出します。税務申告後6年目以後は、税務署への継続届出書を3年に一度提出すればよくなります。
個人版事業承継税制と、税制以外の支援
個人版事業承継税制は、青色申告(正規の簿記の原則によるものに限る)に係る事業を行っていた事業者の後継者が、円滑化法の認定を受けて個人の事業用資産を贈与・相続等により取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。不動産貸付事業等は対象外である点に注意してください。平成31年1月1日から令和10年12月31日までの贈与・相続等が対象です。
税制以外の支援も確認しておきましょう。金融支援では、事業承継の際に代表者個人が必要とする資金の融資を受けられ、会社および個人事業主には信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意されます。
遺留分に関する民法の特例は、後継者を含む推定相続人全員の合意を前提に、先代経営者から贈与等された自社株式・事業用資産について、①遺留分算定の基礎財産から除外する(除外合意)、②算入する価額を合意時の時価に固定する(固定合意)ことを可能にするものです。合意は経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を得て効力を生じます。合意の日から1か月以内に確認申請、確認を受けた日から1か月以内に家庭裁判所へ申立て、という流れです。
除外合意は自社株の分散を防ぎ、固定合意は「後継者の努力で上がった株価が遺留分を膨らませる」問題を防ぐ、と区別すると覚えやすくなります。
※本記事は中小企業庁・国税庁の公表資料にもとづいていますが、税制は改正が頻繁です。受験年度の最新の公表内容もあわせて確認してください。