残り1ヶ月は「積み上げ」ではなく「守り」の期間

直前期にやってはいけないのは、新しい教材に手を出すことと、得意科目をさらに伸ばそうとすることです。1次試験の合格基準は総点数の60%以上、かつ1科目でも40%未満があれば不合格という二段構えです。つまり、90点の科目を95点にする努力より、38点の科目を45点にする努力のほうが合否に直結するのです。

残り1ヶ月の設計は、この一点から出発します。得点の最大化ではなく、足切りの確率をゼロに近づけたうえで総点60%を確保する。これが直前期の目的関数です。

優先順位は「足切りリスク × 伸びしろ」で決める

まず、直近の模試や過去問演習の得点を科目別に書き出します。そのうえで、次の順に時間を配分します。

  1. 40%を割る可能性がある科目——最優先。ここに時間の4割を投じます。難化した年でも基本論点だけは落とさない状態を作るのが目標で、応用は捨ててかまいません。
  2. 50〜60%で揺れている科目——次点。あと数問で安全圏に入る科目は費用対効果が最も高い層です。
  3. 安定して70%を超える科目——維持だけ。週に1回、過去問を数十分回して感覚を落とさない程度に留めます。

科目の性格差も押さえてください。経営情報システムと経営法務は難易度の年度差が大きく、足切りリスクが構造的に高い科目で、「深追いせず頻出テーマの基本だけを確実に」が正解です。逆に財務・会計と経済学は手を止めると精度と速度が落ちるので、毎日短時間でも触れ続けます。

暗記科目の詰め方——最後に伸びるのは中小企業経営・政策

中小企業経営・中小企業政策は、直前1ヶ月で最も点が動く科目です。中小企業白書のデータや施策の内容が中心で、積み上げが不要な代わりに、覚えた直後がいちばん強い。だからこそ本番の直前に持ってくるのが合理的です。

暗記科目の詰め方には型があります。

  • 回転数を上げる。 1周に10日かける精読を3周するより、1周3日の粗い周回を10回するほうが定着します。直前期は「わからない箇所で立ち止まらない」が原則です。
  • 横比較の表を自分で作る。 中小企業の定義、支援機関の役割、補助金の対象者。似ていて紛らわしいものは、並べた瞬間に覚えられます。既存のまとめを読むより、自分で1枚書くほうが効きます。
  • 数字は傾向と大小関係で持つ。 白書の統計は細かい値の暗記より、「増えているか減っているか」「どちらが大きいか」を押さえるほうが得点になります。
  • 朝と就寝前に短時間ずつ。 暗記は接触回数で決まります。まとまった時間より、細切れの反復です。

経営法務も暗記科目ですが条文の理解が絡むため、頻出分野(会社法の機関設計、知的財産権の存続期間、契約・債権)に絞って回すのが直前期の現実解です。

模試の使い方——点数ではなく「運用」を測る

直前期の模試は、実力測定の道具ではありません。当日の運用をリハーサルする道具です。次の3点を必ず本番どおりにしてください。

  • 2日分を通しで、同じ時間割で解く。 特に2日目午後の中小企業経営・政策は、疲労が最大の状態で90分を戦います。この消耗を体験しておくかどうかで当日の結果が変わります。
  • マークシートの塗り方と見直しの手順を決める。 1問ずつ塗るのか、大問ごとにまとめて塗るのか。ずれを検知するタイミングをいつ置くのか。当日に考えることではありません。
  • 飛ばす判断の基準を作る。 「30秒考えて手が動かなければ印をつけて飛ばす」といった具体的なルールを決め、模試で実行します。

模試が終わったら、点数ではなく間違いの種類を分類してください。知識不足か、読み違いか、時間切れか。後ろ2つは運用の改善だけで消せます。

当日の時間配分と持ち物

令和8年度の第1次試験は**8月1日(土)・2日(日)**に実施され、時間割は次のとおりです。

日程 科目 試験時間
1日目 経済学・経済政策 60分
1日目 財務・会計 60分
1日目 企業経営理論 90分
1日目 運営管理 90分
2日目 経営法務 60分
2日目 経営情報システム 60分
2日目 中小企業経営・中小企業政策 90分

配分の考え方はシンプルです。60分科目は1問あたり約2分半、90分科目は約2分を基準にし、残り10分は見直しとマークずれの確認に確保します。財務・会計は計算に時間を取られやすいので、計算問題は後回しにして知識問題を先に回収するほうが安全です。企業経営理論は問題文が長く、読解に時間を持っていかれます。設問を先に見て、必要な箇所を拾う読み方が有効です。

持ち物は前日の夜に揃えます。受験票、身分証明書、マークシート用の鉛筆と消しゴム(シャープペンシルだけに頼らない)、時計、昼食、飲み物、羽織るもの(会場の冷房対策)、そして直前に見返す1冊だけ。最後の1冊を決めておくと休み時間に迷いません。分厚いテキストではなく、自分で作った表やミスノートが最適です。

持ち込みの可否は必ず当年度の受験案内で確認してください。 使用できる筆記用具や時計の条件、電卓など計算補助具の扱いは受験案内に明記されており、思い込みで用意すると当日に使えません。財務・会計や経済学の計算は、補助具なしで解く前提で練習しておくのが安全です。

最後に

直前1ヶ月で合否を分けるのは新しい知識ではなく運用の精度です。足切りを避け、取れる問題を確実に取り、時間内にマークを塗り終える。この3つを模試で作り込むことが、いちばん確実な追い込みになります。