指標は3つのグループで覚える

経営分析の指標は数が多く、ひとつずつ丸暗記しようとすると分子と分母が混ざります。まずは「何を知りたい指標か」で3つに分けましょう。

グループ 知りたいこと 代表的な指標
収益性 どれだけ儲けているか ROE、ROA、売上高利益率
効率性 資産をどれだけ働かせているか 総資本回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率
安全性 支払いに耐えられるか 流動比率、当座比率、自己資本比率

グループがわかれば、分子と分母はほぼ自動的に決まります。

収益性: ROEとROAは「誰の視点か」で分母が決まる

  • ROE(自己資本利益率)= 当期純利益 ÷ 自己資本。株主の視点で、株主が出したお金がどれだけ増えたかを見る
  • ROA(総資本利益率)= 利益 ÷ 総資本。会社全体の視点で、借入も含めた全資産でどれだけ稼いだかを見る

覚え方は「Eはエクイティ(株主資本)、Aはアセット(総資産)」。分母をアルファベットで思い出せます。ROAの分子は事業利益や経常利益、当期純利益など問題によって指定されるので、問題文の指示に従います。

効率性: 回転率は「売上高 ÷ その資産」

回転率はすべて 分子が売上高、分母が調べたい資産 です。

  • 総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本
  • 売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
  • 棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産(売上原価を使う場合もある)

「その資産が1年で何回売上に化けたか」を表すので、数字が大きいほど効率的です。回転期間はこの逆数に12(か月)や365(日)を掛けたもので、「回転率は高いほど良い、回転期間は短いほど良い」とセットで覚えます。

安全性: 流動比率と当座比率の違い

  • 流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債。200%以上が目安とされる
  • 当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債。100%以上が目安

当座資産は流動資産から棚卸資産などすぐ現金化しにくいものを除いたもので、現金預金・受取手形・売掛金・有価証券が中心です。「当座比率は在庫を信用しない厳しめの指標」と覚えると、棚卸資産を含めるかどうかで迷わなくなります。

デュポン分解でROEを3つに分ける

ROEは次の3つの積に分解できます。

ROE = 売上高純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ

  • 売上高純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高(収益性)
  • 総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本(効率性)
  • 財務レバレッジ = 総資本 ÷ 自己資本(安全性の裏返し)

分数を並べて書くと、売上高と総資本が順に約分されて当期純利益÷自己資本が残ることが確認できます。この分解の面白いところは、ROEが高い会社でも「儲かっているから高い」のか「借入が多いから高い」のかを区別できる点です。財務レバレッジが大きいほどROEは上がりますが、同時に負債依存が高まっているので、ROEの高さだけで優良企業と判断しない、というのが試験でも実務でも共通する結論です。

学習のコツ

  • 指標を暗記する前に「どのグループの指標か」を言えるようにする
  • 計算問題は、貸借対照表と損益計算書のどこから数字を拾うかを図で確認する。分母に「期首と期末の平均」を使う指示があるかも見落としやすい
  • ROEを与える問題は、デュポン分解を逆に使って未知の要素を求める形式が多い。3つの積で一定になる、という関係を式で書いてから当てはめる

指標は道具です。「経営者が何を知りたくてこの割り算をするのか」という視点を持つと、分子と分母は暗記ではなく理解で出てくるようになります。